チャリの「月のカヤンバ(kayamba ra mwezi)」で徹夜した翌々日、近所のムヮカイ氏族のムンガ氏の屋敷での「嗅ぎ出しのカヤンバ」を見せてもらうことになった。前日からの大掛かりなカヤンバの最後を締めくくる「嗅ぎ出し」。前夜のカヤンバは仮に知っていたとしても、2連続徹夜になるので参加は到底無理だったろう。嗅ぎ出しのカヤンバは部分的には何度か見ていたものの、それなりの予備知識をもったうえで全部ちゃんと見るのはこれが初めてだったかも。
(from diary of 1989/11/20(Mon))1
昨夜23:00、どこか遠くからkayamba2の音が聞こえていたが、これはMunga(Munga wa ...)の屋敷でのkayambaだったらしい。18日の予定が1日延期になっていた模様。V...君からの情報。今日の午後まで続くだろうと言うので09:00に見に行く。 muwele6はMungaの娘Mulandaでモンバサ在住。かつて目の病気だった。kokotera11した結果、病気は治り、後はその時に開くことを約束したkayambaを開くだけになっていた。その約束の履行。3種類のkayambaを昨夜から連続実行。最後に残ったkayamba ra kuzuzaにたちあうことができた。 13:00帰宅。記念写真をいっぱい撮らされた(DPE後全員にもれなく配布予定)。ポラロイドも4枚その場であげたが、さらに写真代として30シリング要求された!?意味不明!憑依霊の要求ということなので、交渉の余地なし。
患者(ムウェレ(muwele6)): Mulanda wa Munga(Munga氏の娘)
施術師(女性): Chizi wa Gorofa(この近隣で多くの人が頼っている憑依霊系の施術師)
助手たち: 施術師 Chiziの助手たち(氏名不詳)、Mwakai氏族の親族男性たち(主としてカヤンバ演奏者に加わる)
その他観客: 「嗅ぎ出し」のカヤンバはスペクタクル要素もあるので、たくさんの人が見に来る。とくに施術師が憑依霊の棲み処まで小走りに向かい、そこで奮闘するのを見ようと近所の人々がついて行く。子どもたちも多い。
(フィールドノートのメモより12) 夫とともにモンバサ在住のムランダはかつて目の病気で苦しんでいた。占いの結果、彼女のもっている憑依霊ドゥルマ人のせいだとされ、施術師に唱えごとをしてもらうことによって治った。その際に憑依霊ドゥルマ人に、治ったら徹夜のカヤンバを開催することを約束していた。その約束のカヤンバを開催することが目的。これを含め、三種類のカヤンバ施術を、昨夜から連続して行った。
kayamba ra kuphunga13 muwele(浜本注:「ムウェレを扇ぐカヤンバ」kayamba ra kuchesa53「徹夜のカヤンバ」、kayamba ra mbara54「約束のカヤンバ」などと同じ。別項:徹夜のンゴマ参照のこと)
昨夜、夜を徹して行われたカヤンバ。その主たる目的は彼女のもっている憑依霊ドゥルマ人との約束を果たすことで、憑依霊ドゥルマ人に踊ってもらうこと。
kayamba ra konyesa mwana wa ndonga(浜本注:「瓢箪子供を呈示するカヤンバ」)
ムランダは二人の子供をもうけた後、妊娠していなかった。彼女がもっている憑依霊ムルング(mulungu55)が、自分の子供(瓢箪子供)を要求して、彼女の妊娠を妨げていることがわかった。そこでムルングに対して「手付けの瓢箪(mwana wa mufunga61)」を示し、彼女が出産すれば、正式な「瓢箪子供(mwana wa ndonga57, または chereko58)」を差し出す約束をしていた。彼女が無事出産したため、ムルングに瓢箪子供を差し出すカヤンバを開く必要があった。 昨夜、瓢箪の口を開き、なかに「黒い雌のヒヨコの心臟(moyo wa kadzanak'uk'u mwiru muche)」、「薬(muhaso)」を入れ、「舌(lulimi)」つまり瓢箪の口に差し込む棒状の栓を差して、瓢箪の首(くびれた部分)にビーズを巻いて、夜明けに、カヤンバでムルングの歌が演奏される中、ムルングの黒い(紺色の)布にくるんで、外に連れ出しムルング(に憑依されたムウェレ)に差し出す。 (浜本注: 以上の記述はこの日にフィールドノートに記載したとおりであるが、より詳しくは別項: 出産祈願の瓢箪子供を出すンゴマを参照されたい)
kayamba ra kuzuza62
ムランダの体調不良は、laika tunusi67に彼女のキブリ(chivuri63)が奪われたせいだとされており、奪われたキブリを取り返すための「嗅ぎ出し」のカヤンバが最後に行われることになった。私が見たのはここから。
(Nov.20,1989のフィールドノートより)
全身に黒い(紺色の)ムルングの布が被せられている
カヤンバ奏者たち ndongaを囲んでカヤンバでlaika1を演奏
小刻みな仕草でしばらく踊る
09:45頃、呪医はいきなり外に向かって走り出る。
その後ろをカヤンバ奏者、mikahe ya ivu104を入れた編み袋をもった muteji105、chinga109 cha moho(ubani110を焚くための)をもった mwanamadzi7、赤、白、黒の三羽のヒヨコをもった mwanamadziが続く。大勢の人々(ムウェレの親族、近隣の人々、興味本位の子どもたち)がその後を追う。 後ろの方の人々はほとんど駆け足。
呪医は所々で立ち止まる。あたりをうかがう仕草。
その都度、mwanamadziの一人が、トウモロコシ(matsere)、ササゲ豆(kunde)など(murindaと呼んでいる)を四方に振り撒く。
水がほとんど涸れかかった mutsara111 に着く。ここまで40分ほど。
呪医は mutsara では立ち止まってあちこち見る仕草をしたのみで、何もせず、そのまま進む
キラジニ川の支流の涸れ川、岸壁に窪みあり、このあたりの人々にはよく知られているmuzuka20に着く。5分。
ubani110が焚かれ、ndongaがムズカの中に置かれる。mikahe ya ivu104を供え(窪みの中の板状の岩の上に置く)。 唱えごと(聞こえない)、白いヒヨコを屠り、その血を岩の上に流す。黒いヒヨコは羽毛をむしられただけ(殺されずに屋敷に持ち帰られるのだという)。 呪医は muzuka の中の mafufuto112を集め、muteji105のもつmukoba8に入れる。
キラジニ川の本流(?)で、水がたっぷり溜まった淵のような場所まで進む。5分ほどか。


呪医は踊りながら、anamadziらとともに水の中に入っていく。胸のあたりまでつかる。水中に潜り、matoro114 を引き抜いて出てくる。 唱えごと(聞こえない)。水につかったまま、赤いヒヨコを屠り、その血は水に流される。 川底の泥を採ってムルングの黒い布に包む。 岸辺の mukangaga115, murong'ondo116 を採って、matoro、川底の泥とともにmukobaに入れる。
屋敷へ戻る。
川から屋敷までは、皆だらだら歩いて戻る。屋敷のすぐ近くに着くまではカヤンバの演奏はなし。「嗅ぎ出し」においては muganga kachirwa117という規則があるはずなのだが、みんな気にせず雑談しながらばらばらに歩いている。規則は完全に破られている。
屋敷の手前の matanyikoni118 で再び、集合。カヤンバの演奏が始まる。再び呪医を先頭に屋敷に向かう。
屋敷に着くと呪医は muweleが横たわっている小屋の周りを「後ろ向きに(chinyume, chinyumenyume)」、反時計回りに2周した後、やはり後ろ向きに小屋の中に入る。
muweleは小屋の地面の上に(kuchi99を敷いて)仰向けに横たわり、全身をムルングの布で覆われている。kuzuzaの間じゅう、muweleはこの状態で小屋の中で待っているのだという。
呪医はバケツのなかに matoro114, murong'ondo116, mukangaga115 etc.を入れ、水を加える。mwingo102をそれに浸しては、布のうえからmuweleに振りかける。
次にmuweleを抱え起こして、ムルングの布に包んだ泥をバケツの水に浸けては、muweleの頭上で絞るようにして、水を掛け、布の包でmuweleの身体をこするように洗う。
呪医はmwanamadziと二人で、ムルングの布を、脚を投げ出して座っているmuweleの頭上に広げる。
もう一人のmwanamadziが広げた布の上に、水を流し入れ、水が布を通してmuweleの頭から全身にかかるようにする。
呪医とmwanamadziは布をmuweleの頭上で激しく叩いて水しぶきを散らす 15~16を数回反復する。
その後、呪医とmwanamadziは布を畳んでロープ状にねじり、それでmuweleの身体を擦る。
呪医はndongaを手にもって、ndongaの口を自分の口に当て、muweleの身体の各関節、耳、鼻のそれぞれで勢いよく息を吹き付けていく。
最後に、ndongaのlulimi120を使って(lulimiをndongaの中に差し、ndongaの中のmuhasoをlulimiの先に付けて、それを引き抜く)、muweleの身体の各部分にmuhasoを塗りつけていく。背中の部分では、十字を描くように塗りつけていた。 kuzuza終了後の雑談
呪医自身がカヤンバの輪の中に座って、彼女の持ち霊の一人である ichiliku89の歌を演奏させながら、自らgolomokpwa121する。これは彼女特有の流儀らしい。ichilikuを最後に演奏しないとだめなのだそうだ。 締めの曲目について
今日のカヤンバでは呪医はそのままmburuga123に入った。mburugaの内容はmuweleには直接関係のない内容
占いが終了したのち、呪医は短い唱えごとをし、muweleの手をもって立ち上がらせ、それぞれの腕を強く振り出し、それぞれの脚を蹴り出す動作をさせる。 kuzuzaの全過程が終了。
その後、私は人々の要望に応えて記念写真撮影。ichilikuに30シリング要求される。13:00。食事は断り、Mungaの屋敷を辞す。
「嗅ぎ出し(kuzuza)」の施術は、言葉少なめの施術である。憑依霊に言い聞かせることが主たる目的となる通常の「唱えごと(makokoteri)」はほとんどなく、身体的パフォーマンス中心の施術に見える。憑依霊ライカやシェラに奪われたキブリを取り戻すために、ライカたちの棲み処とされる水場まで片道1時間近くかけて、駆け足で向かって、水中から睡蓮や、泥をとって持ち帰り、それらを患者の頭上に広げた布の上に置き、そこに盛大に水をぶっかけ、瓢箪のなかの「なにか」を患者の身体の中に吹き込むことで、奪われたキブリを患者に戻してやる。その間、言語的な語りかけはほぼないパントマイムショーのような施術である。もちろん最初から(水場からの帰路を除いて)カヤンバの演奏が鳴り止むことなく続いているのだが。そしてそのおかげで、施術師がムズカ(muzuka20)や、川のなかで口の中でもごもご唱えていることは、録音ではまったく拾えないことになり、言語資料としてはほとんど注目すべきものは手に入らない。今回の「嗅ぎ出し」では最後の締めくくりに施術師のもつ最も重要な憑依霊シェラの演奏によって、再び憑依状態となった施術師による、まるでサービスのような占いパフォーマンスが、録音資料の中心になっている。それはそれで、内容的にも興味深いのだが。
(段落の先頭の数字をクリックすると該当のドゥルマ語テキストに飛びます) 1014 (ライカの歌1)
ライカ、蝿追いハタキをもって出てこい ザワディ(人名(女性))、ザワディは治らない ンゴマは家にある
私はンゲレンゲレと呼ばれています 恋人(浮気相手)ライカ (以上2行4回繰り返し) 皆さんのお仲間、私は彼に言います「行って、あなたに名前をあげます」と。 恋人ライカ
エー、なんてこと! 施術師、(キブリが)うろつきまわっている124 お母さん、(キブリが)うろつきまわっている ムズカが降っている125 お静まりなさい、癒やしの術(uganga)のキブリ126 私のキョウダイ、(キブリが)うろつきまわっている (キブリが)うろつきまわっている あなた、どうして泣いてるの、私のキョウダイ (キブリが)うろつきまわっている ええ、我が子よ (キブリが)うろつきまわっている
ライカ・ムェンド(laika mwendo68) 私はお父さんに呼ばれています お母さんは、高速なお母さん ライカ、お前はお父さんに呼ばれました、ウェー 私の高速な太鼓
1018 (「嗅ぎ出し」は、小屋の中でムウェレにキブリを戻して、一段落した。最後に施術師を囲んで締めのカヤンバ演奏をするばかりとなる)
Man1(M1): 疲れるとなると、とことん疲れるもんだな。 Man2(M2): この仕事、ずいぶん前に始まったものな、お前さん。昨日からだもんな。 M1: 昨日以来が、ずいぶん前かい? M2: 俺自身は、一昨日に始めたんだが。 Woman(W): さあさ、中で(乳香 or fufuto112?を)燻してくださいな。 M2: (まだM1との会話を続けている)おまけに、また晩にも作業が残っている。またやらないといけない。 M1: (女性に向かって)どの方を燻すんですか。 W: (小屋の)なかでですよ。そちらの屋敷ですよ。 Lung'anzi(L): だって、この暑さときたら、これからもっと厳しくなるだろうね。この時間なら、火は外でおこしてある。(燃えている薪を)かき寄せて、吹いてやれば。 M1: 俺たちのワリ(wari トウモロコシ粉の練粥)は、炭とか灯油コンロで料理してます。 W: なに?あなたは招待されているのよ。ワリも料理してもらえるでしょう?
M1: そう。俺たちの、カヤンバのワリだ。鶏もすでに屠られてる。 W: あなたの役目だったの、そう言われたの? M1: 言われたんだよ。実際、私が羽毛むしり役だった。 W: あなたが屠ったの? M1: 屠った者には、(鶏の)首のところがもらえるんだぜ。ところで、今からライカ(のための乳香(あるいはフフト(fufuto)か))を燻すのですか、それともどれ(どの憑依霊)を燻すんでしょう?その後で、どれを演奏すればいいのですか? Chizi Gorofa(施術師(Cg)): ライカはまだ踊ってませんよ。 W: キジョゴロ(chijogolo127)を打ってもらいましょうか?オオカワセミ(gandegande128)を打ってもらいましょうか。 M1: お前、罰金だよ。4シリング寄越しな。カヤンバは鳴らすなと指示されている。お前なんでカヤンバを鳴らすんだよ。4シリング寄越しな。さあさあ、とっととムルングを演奏しましょう。私はもう帰りたいんですよ。それとも皆さんムルングをもう打ったのなら、おしまいですね。 M2: そいつ(ムルング)は打ちませんよ。ムルングでカヤンバをほどいた(開始した)んですから。
Lung'anzi(L): 皆さん、ムルングをそのまま打ちましょう。ねえ、皆さん、ムルングを打ちましょう。彼女が煮え立つ(憑依状態になる(achemuke129))まで。クスカ(kusuka131)のリズムでとっととムルングを演奏してくださいな。そして終わりにして、皆さんが、休息なさるように。 Chizi Gorofa(Cg): ああ、皆さん私のことをご存知でしょ。私がカヤンバを打って、終わりになれば、私の(憑依霊)は、シェラ(shera86)よ。私が終えたら、私は帰ります。(その後で)あなたがたはムルング(の曲)を打って、立ち去ればいいわ。とうの昔にムルングは踊りおえて、自分の欲求をすでにかなえているの。私がすることは、患者を起き上がらせることよ。 M1: あなた、最初にこう言えば良かったのに。「皆さん、どうしてムルングを打つわけ?まずは私にシェラを打ってくれないと。そしたら、私は立ち去ります」とね。彼らはあなたの弟子たちなのに、頼んで弟子たちに言い負かされるなんてありえないでしょう。 Cg: 私は、あなた方はムルングを打つことになるわと言ったのよ。後でムルングをお打ちなさいと。私が、患者を起き上がらせ終わったらね。 M1: でもこのシェラで、彼女(患者)もここにこのまま座っているんですか? Cg: 彼女も座らせます。彼女自身も踊っていいのよ。 M1: 憑依霊ディゴ人も。それともシェラだけ? Cg: シェラだけよ。シェラこそ私の締めくくりの憑依霊なのよ。
M3: 男衆、外に。どうか出てきてください。別のちょっとした仕事です。たいした仕事じゃありません。出てきて。ちょっとした仕事です。 (患者と施術師を囲んでシェラの演奏開始)
シェラ、シェラ、私のキョウダイ なんとシェラ、どうした、太鼓(ngoma5)、エエ、シェラ、ウェー ゾンボ(dzombo132)、シェラ、太鼓 私にハマクサギ(muvumo133)の木を採ってきて ゾンゴゾンゴ(dzongodzongo135)が来るのはどうして?お母さん。 あなたに何をあげましょうか、ウェー 私は痩せました、ウェー、池で 太鼓、渇望 シェラ、ウェー、なんと、シェラ、蝿追いハタキ(mwingo102) 降りてきて、あなた、夜明けに池に
驚かされた、ウェー、驚かされた 驚かされた、お母さん、そう あなたは驚かされた きちがい女はあなた あなたは池で驚かされた 参考
私は道を進みました、老人用の杖(museche137)、ええ 私はまだ知られていません 当地の友人たち 子供はシェラを怒らせた 私ときたら、なんと、シェラは私を石女(mugumba139)にしてしまいました シェラは子供を生みました その子に癒やしの術を授けました 私の子は、子供を娶りません 身体は震えています シェラ、どうして私を石女にするの? 参考
我が子、憑依霊(nyama)よ、エエ 我が子、憑依霊よ、エエ 我が子はみじめ、シェラとはお話できない 我が子、憑依霊よ、施術師たちを泣かせないで 黙って考えて、我が子ンダワ(人名(女))よ エエ、どうしてこの世は、こんなに速い ここでなされたあれこれ 私は自分を軽んじた 私は、他人のことは話さないわ 昨今の世界は、どうして変わってしまったの あなたを見る人はみな、あなたを愚か者と思う 食べることが好きなのね、あなた 問題ないわ、あなた 悪くなったタマリンドの実140にも猿(t'umbiri)はいるわ
睡蓮子神 あなたどうしたの?ウェー、癒やしの術の噂が届きました (睡蓮子神は)独りで寝ています ビーズ飾りは寝ています、癒やしの術の噂 驚いたわ、ぐるぐる廻る なんと、ぐるぐる廻る お母さん 何を話せばいいの? 私の友が、私に(シェラを)注ぎ込んだ (chorus) シェラ、ウェー、私は寝ます カテジェ(人名)、どうしたの? 病人、どうしたの?私の友よ。 はー、箕(lungo52)のようにぐるぐる回れ エエ、ヘエ、ムァラロ(人名)、私は参りましょう 私の花、お母さん、いかが? 私の花、お父さん、私の花 私はブェラ(bwela141)のことを考えています 私の花、どう?私の花 私はンゴマの件は放置しました、私のおともだち、どう?ンゴマ ムウェザ(人名)の嫁は、どんな風に眠っていますか、ンゴマ 私は問題は放置しました、ええ、ニムゥィンゴ(人名) あなたもお行きなさい、どう?ンゴマ エエ、瓢箪。さて私はどうしたらいいの、施術師のみなさん
お母さん、私は来ました、ここ池に 病人たちがいます 私は来ました、ここ池を立ち去ります 病人たちがいます この闘い、ウェー さあ行きましょう、施術師のみなさん
お母さんは速い人 速い人 私の出身地は遠い やって来る、速い人 シェラは、速い人
病いとともに放置された 私は惨めな人間よ、お母さん 眠っても、私は治療されません 何をすればよいのでしょう? 病いとともに放置された 私は惨めな人間 蚊帳 エエ それは闘い 蚊帳、闘い、エエ、闘い、蚊帳 ンゴマ、雄鶏はしゃべり、もう少しで私は殺されるところ 雄鶏はしゃべる それは闘いです、蚊帳 結婚を結んで、エエ お母さん、内陸に行きましょう、行きましょう、行きましょう
1030 (シェラの歌8停止。シェラに憑依された施術師による、一人の女性に対する占いがすでに始まっている。)
Chizi Gorofa(Cg): 心臟の動悸が速いね、友よ。果ては、休み無しにため息をつく。 Woman(W1): そのとおり感じています。 Cg: あなたが感じているのかい、それともそれには(別の)所有者がいるのかい。 W1: 私が感じています。 Cg: そして身体に火がつくことはどうだい、友よ。 W1: 身体に火がつくことは、感じています。でも、たいしたことはありません。 Cg: たいしたことはない。ではこの癒やしの術、お前が(手に入れることを)求められている癒やしの術、どうしてされていないんだい? W1: それについては何も知りません。私が癒やしの術をもつことを求められているなんてことは。 Cg: あんたはそのことについて全く知らないと。(...聞き取れない...) W1: そのことは感じています。感じています。
(Chizi、この女性に対する占いを中断し、別の男性に向かう)
Cg: (別の男性に向かって) 熱を出してるね。 M3: タイレ(taire142)、その通りですよ。実に。 Cg: ときには、「私の友(かかりつけの施術師)のところに言って、これらの問題を相談してこよう」と言うことすらあるよね?でも、あんた、病人はあんたじゃないね。 M3: タイレですってば。確かに私じゃありません。 Cg: あんたは同情している。 M3:どうもどうも。確かに私のことじゃありません。だって、私は健康そのもの。御覧なさい、雨のような汗でしょ。 Cg: 同情はね、言われるには....(聞き取れない)... M3: タイレです。そう、病人が私を遣わせたのです。さて、どうすればいいのでしょう。私に縷々お話ください。帰って、報告したいのです。私はこちらに着いて、たしかにその問題を相談した、そしてしかじかと判明したと。そうすれば、彼女も私を信用してくれるでしょう。
M3: でも今、私が帰って彼女に嘘をつけば、彼女は「ああ、この人は自分で勝手に話しているだけで、実際には行ってないわね」と知ることでしょう。 Chizi Gorofa(Cg): 「あなたは私の問題をいつ知ったというの?」 M3: そう、タイレなんですよ。 Cg: 他人の噂話でとは言いますまい。彼女の屋敷でのことですね。 M3: 戸口でですよ(まさに問題は屋敷内部のこと)。事態をこんな風にしたのは、いったい何なんだろう。彼女に、キリストに入ればいいとまで言いそうになりましたよ。なにね、近くなもので。キリスト教徒たちのブクブク(ンゴマの音)で夜通しねむれないほど。 Cg: ときに、彼女はお前さんに頭痛のことを言うんじゃないかい。 M3: タイレです。 Cg: 心臟とね、友よ、お腹の問題も言うんじゃないかい? M3: タイレです。 Cg: 腹がはちきれる(便秘)って、ときにお前に言わないかい。 M3: とってもタイレです。
M3: それこそが彼女を困らせている病気です。私も、もう一人の匠が中に入ったんだろうかと(また妊娠したのだろうかと)言いそうになったほどです。そんな風に困らせる病気はなんだろう、彼女をキリストに連れて行こう、それとも病院で別の注射をしてもらおうと、しそうになったほどです。そうなんですよ、ええ、彼女をそんなふうに困らせている病気はなんだろう。私は何をすべきなんだろう。 Chizi Gorofa(Cg): 妊娠して以来、彼女は心臟のことをお前さんに話していたんじゃないかい? M3: タイレです。 Cg: お前さんは、でもそれを放置した。たぶん、ニョンゴー(nyongoo134)だろうと言ってね。 M3: ええ、だって子供がお腹の中にいるのがわかってたんだもの。子供が入れ物を(内側から)押し広げようとしていたからね。 Cg: そしてやがて出産した。なのに今になっても、お腹のトラブルはまだ彼女から去っていないよね。 M3: 未だになんですよ。そのことに困惑してるんですってば。 Cg: そして腹はトゲで刺されたみたいに痛い。彼女がここ臍のあたりをこんな風に押さえると、トゲを感じる。さらに、言わば、この背中の中心(moyo wa nyuma143)あたりも、トゲで刺される。
M3: とてもタイレです。畑仕事も今では嫌がるほど。丸太をそこに押し付けたりするほど。いったい何なんでしょう?彼女をモンバサの大病院(makadara144)に注射してもらいに連れて行こうか。それはだめだ。 Chizi Gorofa(Cg): そして、何時間も続く(何度も時間をおいては反復する)頭痛。 M3: 何がそんな状態をひきおこすのかわかりません。私は今はただ当惑するばかり。もしかしたら胎児が二人いたんじゃないかと考えたりします。私はどうすればよいのか。 Cg: お前さんは治療を講じてはいる。治療を受けさせていないとは言いません。憑依霊ドゥルマ人の草木を採りに行ったりしなかったかね、お前さん。 M3: タイレです。すでに頑張りました、そうですとも。子供にも、お母さんは病気なんだよと言う。もう、私は何をすればいいのか。もう、お金は(治療のために)出ていった、でもその治療法は違っていた、そう言いたくなるような状況です。 Cg: でも、結局お前さんは(憑依霊たちを)騙していた。お前さんは、確実だということを彼女に整えてやってないんだよ。例のンゴマはお前さん、彼女に与えたかい?
M3: ああ、まだです。まだやってません。 Chizi Gorofa(Cg): お前さんの相棒は疲れてしまった。重荷を運んだから。そしてお前さんは彼女に言わない。さあここを握って、やりましょうと。さて、お前さんにひとつ尋ねたいんだが。 M3: どうぞ言ってくださいな。私にしっかり傾聴させてください、これから私に話されることを。私は嘘つきなんかじゃありません。 Cg: さてお前さんは知っている。行くこと(性交すること)、そしてその後に、(お前の妻が)「私はもう近づきません(性交をしたくありません)」と言うんじゃないかい? M3: タイレです。なんと問題があるんですね。 Cg: そもそも彼女がお前さんと夜を過ごしたら、お前さんに言うんじゃないかい。「ここ下腹部がとても痛いんです、あなた」って。 M3: タイレです。 Cg: まるでお前さんが仕事を終えたあとで、また戻ってさらに仕事するみたいな。 M3: とてもタイレです。
Chizi Gorofa(Cg): そして水が溢れてくる。 M3: とてもタイレです。まさにそんな具合です。彼女本人も、あれ以来ずっと妊娠しているようだと言ってました。 Cg: あの口実(憑依霊が患者を苦しめる理由にしているもの)を果たしていかないとね。 M3: その口実を私が果たさないと、ですか? Cg: あの口実を果たさないとね。憑依霊ディゴ人の布はあるかい? M3: ありません。 Cg: 憑依霊ドゥルマ人の布はあるかい? M3: 破れてしまいました。 Cg: お前さんたち、約束はしたのかい? M3: (憑依霊に)私は申しました。子供を産ませてくれ、そうしたらあなたに布を差し上げますと。 Cg: で、もう与えたのかい。 M3: まだですよ。だって、妻が病気で、私も動転しているんですよ。
M3: でも、(ンゴマを打ってもらうために)茣蓙(kuchi99)の上に彼女がどう座れるっていうんですか?そこがトゲで刺される(みたいに痛い)んですよ。私はどうしたらいいんですか? Chizi Gorofa(Cg): こんな風にトゲで刺されて、座ることができないほどなのかい? M3: はい、私にここのあたりがトゲで刺されるって言うんですよ。私はどうすればいいのでしょう。後は、彼女が快方に向かうには、私が何をしたらいいのか、教えてくださるだけです。そうすれば彼女をンゴマのために座らせられるでしょう。 Cg: (浴びるための)薬液(mavuo39)だったら、もうすでにもらいに行っただろう? M3: タイレですよ。 Cg: 薬(mihaso23)も飲んだね。 M3: しっかりと。 Cg: すると彼女は、少し良くなった気がするって言った。 M3: たしかに、それらの薬はすっきりした... Cg: じゃあ、行って、その施術師に来てもらいなさいな。来てもらって、ホヨホヨ(カヤンバの擬音語)してもらいなさい。
Cg: しかも、なんとね、お前さん、そんなにたくさんの歌を置いてあげることもないでしょうね。でもなにも置いてあげないということではなく、ええと、ええと、ほんの少しだけでいいのよ。それで彼女はとっても良くなるわ。小雨季(vuri)には畑仕事ができるほど。 M3: なんとあの私の妻が! Cg: たしかに彼女治るわよ。たしかに今はあなたは、あからさまに彼女が病気だって言うわね。彼女はあなたに、腕がたち割られたように痛いって、脇腹がトゲを刺されたように痛いって言うでしょ。 M3: そしてすごく機嫌が悪いんだよ、彼女。私がワリ(wari145)を食べたくても、まず彼女の顔色をうかがわないと。もし怒っているようだったら、もう私が自分で調理しますよ。だって、下手したら、杵で叩かれるとわかってるから(笑い)。 Cg: 子供も、そもそも、背負われる年齢なんだけど、大人みたいに何度も平手打ち146されたりする。 M3: 本当にぶたれるんですよ148。私が自分の子供を抱くよって言ったほど。
Chizi Golofa(Cg): それは、お前さんが自分でやっている分別なしの行為(kasidi149)のせいだよ。 M3: とんでもない。私が、それが誰のせいなのか知っているとでも?私は、もう少しで彼女をキリストに連れていくところでした。でも、もしそれらの原因でしたら、さて私は何をしたらいいのでしょう。彼女が快方に向かうためには。彼女のために、カヤンバを打ってもらいはしますよ。 Cg: 薬液(vuo39)はすでにもらいに行ったけれど、治らなかった? M3: というわけで、さて私はどうすればいいのでしょう。薬液はもらった、草木、たしか煎じる草木も手に入れました。 Cg: お前さんはあの薬液を彼女に与えたと言ってたけど、このムルングの薬液については? M3: 彼女に与えませんでした。(施術師は)あの応急処置の薬液をくれたんです。それと薬(mihaso)。 Cg: あんなふうに腹にトゲが刺さるのは、お前さん(施術師に)憑依霊ドゥルマ人の草木をもって来るように言いなさい。ドゥルマ人の薬といっしょに煎じて。あいつら、お前さんはあいつら、大物たち(enye chiti152)を後回しにしちゃったんだよ。さてその後で、行って世界の住人全員(arumwengu osi153)のための薬液をもって来てもらいなさい。来て扉のところにそれをきちんと据えてもらいなさい。それと飲む薬(mihaso ya kunwa23)だ。そして憑依霊に唱えごとをし、憑依霊に例の歌(wira4ここではンゴマの開催のこと)を約束し、そしてさらに憑依霊たちの布をお買いなさい。
M3: どの憑依霊たちの布ですか? Chizi Golofa(Cg): ムルングの布は彼女もってないの? M3: 破れてしまいました。だって、そのとき彼女は妊娠していなかったんですから。(ムルングの布は)妊娠するまでは、野良作業のために使いましょうと、彼女に言ったんです。そう、私は(ムルングの布)が必要になることは知ってましたよ。(子供が出産したら)その布で子供に(薬液を)振り撒くのですから。 Cg: 彼女、身体(じゅう)が痛いんじゃない?夜になれば、とっても痛くなる。 M3: うめき声をあげるほどね。私は眠っています。別の場所、別の部屋で寝ているので。私は言います。「皆さん方、あちらで女性がうめき声をあげてますよ。」そこに行ってみると、彼女なんです。 Cg: ああ、それはお前さんの分別を欠いた振る舞い(kasidi149)のせいだよ。そもそもお前さんが彼女を悲しませてるんだよ。ほんの些細なことでね。たとえば、お前さんお金を手に入れることもあるだろう。お前さんは言う。この金は私のものにしよう。そして彼女のためには何もしてあげない。彼女が目を開けると(お金のことに気づくと)お前はすでにお金を酒に使い尽くしている。すごく悲しいよ。これが、彼女を病気で倒れさせるものだよ。 M3: タイレですってば。たしかにお金は彼女といっしょに手に入れるものです。
Chizi Golofa(Cg): じゃあ、なんでお前さんは、そのお金を独りで飲んでしまうんだい。 M3: さて、もう、次、行かせてください。さて、彼女のために、池(ziya38)と飲む草木を手に入れてあげて、その後で唱えごとをしてもらえと。 Cg: 池はこれみたいなのを(今日のカヤンバのために用意されていたものを指して)。そして(憑依霊に)話して聞かせる。しかじかの日にやりますと話してやる。お前さん、そこでさっそく嘘をついたりしてね。(ンゴマの場で)憑依霊本人に出てきてもらわねば。そしてお前さんは、(そこに)あのムルングの布をもってくる。 M3: それも、ただちに、ですね。例の友人(憑依霊のこと)がそこにいるんだから。 Cg: でも、(治療に当たる施術師が)要求するお金だけど、(その金額は)私はわからないね。お前さんが購入することになる品々もね。 M3: 新品そのものは、望ましくないのかね。 Cg: 新品そのものが良いさ。もう、お前さん自身こそ、彼女(の治療を)送らせている張本人じゃないか。彼女を悲しませる争いときたら....(聞き取れない)... M3: えええ!
Chizi Golofa(Cg): 私がその場に居合わせているとでも? M3: いいえ、あなたはいませんよ。 M3(別の男に向かって): おい、お前、生木の細枝を2本、今すぐもって来てよ155。 M3(受け取った枝をChiziに差し出して): さて、あなた。私は牛追い人を自分で握ります。さあ、これらの者たちについて私に話してください。これら二人の誰を私は握ればいいでしょうか。さっそくにでもそれ(治療)に、とりかからせてください。 Cg: (枝の一本を差し出しながら)施術師はこの人だね。 M3: それにすぐにとりかからせてください。 Cg: すぐに治るよ。この人があなたの施術師だよ。この人が施術師だよ。 M3: というわけで。 Cg: でも薬液はこれみたいにね(横においてあるスフリア100の薬液を指して)。 M3: 山盛りにですね。 Cg: (憑依霊に)しっかり唱えごとしてもらいなさいな、友よ。そして歌(wira4)の日取りを約束、そいつに約束しなさい。彼女が完全に治りますようにとね。
Chizi Golofa(Cg): 最大の争いはムルングの布ね。もしかしたら憑依霊ドゥルマ人の布もあるみたい。でも最大の争点はムルングの布。 M3: 彼女の子供は全員ムルングの布でおんぶされていたのを知っています。 Cg: こんな風にビーズの縁飾り(vipaji156)を付けたね。さて、嘘をつき続けるならどうぞ。ご自身でお酒を飲みに行けばよい。帰ってきたら、また憑依霊に嘘をついて、初めてみたいな顔をして憑依霊と談判すればいい。 M3: お金は無くなっちゃった、てね。 Cg: ご自分はというと、ファー(くつろいで座っていることを表す擬態語)。 M3: 私が?そのとおりですよ。 Cg: お前さんは、お前さんの一族のところで、してやられたんじゃないかい158? M3: してやられたって今の屋敷でのこと、それとも私が育った場所のことですか。というのも屋敷は二つだったからです。まるで身を持ち崩した女性みたいに159。そうされたのが、私が育った屋敷でのことだというのなら、私に言ってください。 Cg: お前さん、自分でお知りなさいな。(私が言うと)お前さんは私のことをゴシップ好きの女だと言うでしょうから。
M3: ねえ、ちょっと。じゃあ、私が何をするようにと、そいつ(妖術使い)が私にどう言ったのか、どうか私に教えて下さい。 Chizi Golofa(Cg): お前さんが自分でお金を手に入れながら、自分でそれを大急ぎで捨ててしまうってことじゃないかい。お前さんは、お金を食べて(無駄に消費して)無くしてしまうようにと言われた(呪詛された)ってわけ。 M3: 今は、まず、この先々のお金のことを、私につまびらかに話してくださいな。だって、現に今も私は悩まされているんですよ。全然、お金が得られないんです。そんな風にしているのは誰の仕業ですか。 Cg: お前さんの友人だよ。お金の持ち主(雇用主)。その人がお前さんをひりひりさせている(苦痛を与えている)んじゃないかい。 M3: たしかに、彼は私に半分ずつしかくれなかった。彼は私をひりひりさせた。おまけにその後も同じように半分半分しかくれないんだ。 Cg: その問題は、でも、まあ言わば、ごく最近(字義通りには昨日)の問題だね。でも(私が言いたいのは)ずっと昔のことなんだよ。それが問題なんだよ。 M3: そのとおりです。タイレ! Cg: そこでひりひりさせられた(苦しめられた)のは、お前さんだけじゃない。お前さんたち全員(彼のキョウダイたち)が、ひりひりさせられたんだよ。お前さん方はお金持ちになると見られちゃったんだね(その妖術使いに嫉妬された)。
M3: 私たちはお金は手に入れる、でもそれで何かをなしとげる道筋はというと、わずかしかない。多くは、ただ金を食べる(無駄に使い尽くしてしまう)だけ。たとえば紅茶。子どもたちが紅茶の飲み過ぎで、赤みがかった尿を出すくらいだ。 Lung'anzi(L): そもそも、そいつは「あいつらは戻って来るさ」って言ったんだぜ。 M3: そいつ、屋敷に居ながらにして、「あいつらが戻って来る」ってわかるなんて。なんて邪悪な言い草じゃないか!同じ彼の一族の人間なのに、私たちに悪しきことがあるように(と呪詛する)なんて。 (浜本注: 以上のやりとりはわかりにくいと思うが、ことの経緯は詳しい女性が解説してくれたので、それをお読みいただきたい。) [占いは終了]
(Chizi、最初に占いを始めた女性W1との会話に入る。彼女の母親に対してカヤンバが最近開催されていたらしい)
Chizi Golofa(Cg): 男衆、あんたらのンゴマ、まずはどんな具合だったの?徹夜のンゴマ... Kayamba Player: 太陽が、あちらの(東の空を指して)雲を裂くまでさ(つまり夜が明けるまで)。 Cg: 彼女はかつて施術師だったんだよ。だからあなた(W1)は施術上の子供でもあるわけ。子どもたち全員がね。でもあなた、あなたが癒やしの術を求められているのよ。あなた、施術師になるわよ。
Woman1(W1): 私、癒やしの術は拒みません。もしかしたら、この癒やしの術を外に出してもらったら、私、治るかもしれないから。そうなら、私が何を拒めるというのでしょう。 Chizi Golofa(Cg): いいえ、まあ、あなた治療してもらわないにせよ、だって治療してもらわないにせよ、当の癒やしの術は...(言い終わらずに中断)。この乾いて固くなることはどう?まるで魚みたいに。食事をとれず、満腹にもならないこと、経験してない? W1: ああ、それ、タイレよ。そもそも食事をとることにしても、(人に)食べなさいと言われないと(自分から進んでは食べられない)。 Cg: (癒やしの術は)自分の方からやってくるわね。 W1: 到来する? Cg: ここは掃き掃除されるみたい。私は帰って眠りたいわ。ここでは仕事は終わりました。 M2: 我々も終わりにしませんか?仕事は良好です。今はあなたのモノ(ut'uo ワリ145のこと)をいただきましょう。でもまずはご傾聴ください。 Cg: 私の友だち(M3)は?
M2: そのあなたの友人なら、私に彼のためのンゴマを、しっかりと打たせてください。その他の懸案については、様子を見て、整えましょう、でも... Cg: では、彼にウシ(ng'ombe160)を差し出しに来るよう言ってちょうだい。私たちは帰りましょう。立ち去ります。まだ...してないけど。 M2(M3に向かって): おい、こっち来いよ。お前さん、きてウシを払わないと。おっと、ぶっ叩かれるかと思ったよ、おれ。結構、結構。 M3: 他にも支払うことは? M2: これで十分だよ、俺たちはこれで。 M1: 私もね、同じように望んでいることがある。このあと、うちに来てくれないか、私の屋敷に。
1047 (予告もなく、Chiziはムウェレに対して締めくくりの唱えごとを始める。慌てて録音するが、あっというまに終わる)
Chizi Golofa(Cg): (未録音パート、憑依霊たちの名前が列挙されていく部分)...私は皆様にお静まりくださいと申し上げます。とき解いてください。すっかり健康でこの場を立ち去りますように。子供をお受け取りになったように、(瓢箪子供も)お受け取りください。どうか解きほどいてください。もう争いごとは、なし。さらに別の問題を持ち出してくる争いも、なし。それでこそ、結構というものです。彼らを受け取り、行って、彼らのために(瓢箪子供の中にいれる)ヒマの油(mafuha161)を調理し、彼らに香料(mavumba162)も十分に与え、背中に背負う子供を養い、そして胸のところにいるこの子(瓢箪子供)を養ってください163。皆さま方、どうか穏やかに。...さて。終わりました。 (Chizi、ムウェレの手を取って立ち上がらせ、脚を強く蹴り出す仕草をさせる。) [嗅ぎ出しのカヤンバ終了]
1048 DB 1042~DB 1044 で語られている経緯についての、ある事情通の女性による解説
M3氏の父親 A は呪医であった。 A の死後 M3氏の母親は、A の兄 B 氏と再婚(gungu marriage164)した。 M3 も母とともに B の屋敷で育てられた。これが、彼が育てられた屋敷のことか、それとも今の屋敷のことかと聞いている訳である。 Bは妖術使いだといわれている。M3 氏は B 氏に妖術をかけられたために、現在の屋敷にうつり住んだ。 しかし、彼が B 氏の屋敷をでる際に、B氏は「あいつらは出て行ったけれども、やがて帰ってくるだろうよ」と述べたという。
概要で述べたように、私が実際に立ち会うことができたのは「嗅ぎ出し(kuzuza)」のカヤンバのみであるが、これは昨夜から始まった一連のカヤンバの最後のエピソードだった。このカヤンバには憑依霊ドゥルマ人に約束していた徹夜のカヤンバ、瓢箪子供(chereko58)を差し出す明け方に行われるエピソード、と「嗅ぎ出し」の3つの目的があったわけだが、赤ん坊が生まれて1週間ほどで行われる瓢箪子供のエピソードが待った無しの主目的で、あとはこのタイミングに合わせて、遅れていた約束の履行をし、気になっていた体調不良のための大掛かりな施術も同じカヤンバの流れの中で済ませてしまおうという感じだったのではないだろうか。締めくくりの短い唱えごとのなかでは、瓢箪子供の話だけが直接言及されており、他の二つのカヤンバについては何も触れられていない。
「嗅ぎ出し」について、少し気になるのは、「嗅ぎ出し」でキブリを戻した後には、再びキブリを奪われるのを防ぐための、クツォザ(kutsodza98)による防御(kufinya165)の施術が行われるのが通例であるが、今回の「嗅ぎ出し」ではそれは行われていないという点である。この施術は、紹介頁でも指摘した通り、施術師ごとのやり方の違いが目立つ傾向があるのだが、この省略が施術師Chiziの流儀なのか、今回の施術での偶然の省略なのかはわからない。
また通常は徹夜のカヤンバの席上でなされる(まったく行われないこともあるが)主宰する施術師による占い(mburuga)が、「嗅ぎ出し」終了後の締めのカヤンバ演奏のなかで行われた点も予期せぬことだった。私は徹夜のカヤンバには参加していないので、そちらでも行われたのかどうかわからない。「嗅ぎ出し」マラソンの後は施術師も皆もかなり疲労しているので、その上で行われたとすれば大サービスである。
ここでの紹介でもおわかりのように、「嗅ぎ出し」施術は、かなりスペクタクル要素の強い施術である。でも、私のように言語中心の調査者にとっては、得るものがそれほどないとはいえる。大きなンゴマに組み込まれていることも多いので、それに参加する機会はとても多いのだが、よほど気まぐれにその気にならない限り、マラソンパーツは遠慮して、屋敷でのんびり人々の帰りを待つ(仮眠もとれるし)ことが普通になってしまった。
でもチャリたちの嗅ぎ出し「反省会」でも、「嗅ぎ出し」の先の水場で出会った怪異や経験が興奮して語られることが多いので、マラソン派の施術師にとっては、スリルと刺激に富んだ経験でありうることもわかる。私が共有できなかっただけで。
考えて見れば、患者の重要な一部であり、生死にも関わる(万一奪われたキブリが切り殺されたりすると患者自身も死んでしまうくらいなので)キブリ(chivuri)が、現に憑依霊によって奪い隠されており、それを見つけて取り返さねばならないとなると、スペクタクルなどと言ってはいられない。取り返す際に、憑依霊を上手に説得できなければ、格闘になるかもしれない、打ち負かされると施術師も死ぬなどと言われると、怖い話である。
物語世界の観客にとっては、単なるスペクタクルかもしれないが、物語世界のなかの住民にとっては生死を掛けた真剣勝負なのかもしれない。
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tsovyaの別名とされる「内陸部のスディアニ」の絵 ↩
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