生まれてほどない男児(まだ離乳していない)の病気についての占いである。相談者はキナンゴ町在住と思われる高齢の女性。占い師(Chari)とは面識がない。病気の子供は彼女の初めての孫らしい。チャリにとっては簡単な内容だったらしく、占いはすぐに終了。現在キナンゴ病院に入院している子供は、その母親に憑いている憑依霊が母乳を介して、子供に危害を加えているというもの。憑依霊、ペーポーコマ、ムドエ、スンドゥジなど母乳を介して女性の子供に害を及ぼす霊たちが名前を挙げられる。
占いの施術師: Chari Malau 相談者: un-named old woman
病人: 離乳前の新生児 症状: 発熱(逆に手足が冷たくなる) 激しい泣き(身体をつっぱらせて) ゼイゼイする呼吸(脇腹が押し込まれている) 母乳を飲むと嘔吐、下痢する、大量の水を飲む 下痢(白っぽいぬるぬるした紐状の便) 尿が少なく、熱い、黄色い 診断: 母乳を吸うと症状が悪化 母乳が薄く劣化している
多くの憑依霊の名前が挙げられているが、母乳を悪くしている憑依霊は、母親の乳房の辺りに居座っている以下の憑依霊で、これらの霊たちは通常セットで治療される。
母乳を水のように変えてしまう霊だが、それに加えて発熱で身体が熱いのに、手の平や足が冷たくなること、いつもうつらうつらして眠ってばかりいる点も指摘されている。
名前が挙げられているだけだが、スンドゥジ、ムドエなどとともに、母乳を水のように変えてしまう霊として挙げられている。
乳房を張らせて、母乳を水のように変えてしまい、子供に嘔吐と下痢を引き起こすことが指摘されている。
上記の他の霊と同じく、母親に憑いて母乳を水のようにしてしまう。ここではムドエ独特の症状としていつも口をもぐもぐさせていることに触れている。
ここでは一度名前が挙げられただけで、詳しくは述べられていない。子供の激しい泣きは、しばしばドゥングマレの症状。ピングは必要。
ここでは名前が挙げられたのみ。
ドゥルマ語テキスト (DB 3378-3388) (3379途中から。ここまでにチャリは相談が男の乳児についての相談であることを言い当てている。) Chari(C): 施術師の皆さん、ご傾聴ください。 相談者(P): ムルングの。 C: あなたは自分についてこの占いを打ちますとおっしゃったけど、病人は病院にいますね。 P: はい、そのとおりです。 C: ご傾聴くださいと、申しましょう。 P: ムルングの。 C: あなたの家の子供ですね。 P: そのとおりよ。タイレ1よ。
3380 C: 生まれたてとは言いませんが、まだ母親から離乳はしてないわね。でもあなたのお家の子供。でもこの病気の始まりは最初はハクション[^chiachakpwa]に始まったわね。 P: タイレ。 C: 泣く。 P: タイレ。 C: そしておえっとなること、私にはあると見えるけど。今にも嘔吐するみたいなね。 P: タイレ。 C: そしてこの排便についてもね。 P: タイレよ。 C: なんと、あなた急ぎすぎよ。(言い終わる前に同意されてしまったために) (チャリ占い歌を歌う)
C: あなたがた、問題となるものを求めていらっしゃった。でももう手に入ったわ。問題の場所に着きました。身体が熱い、泣く、力を込めて泣く。あなたその子が、まるで筋肉が硬直したみたいに、身体を固くするのを見ませんか? P: タイレ。 C: そしてこのちょっとした咳については? P: あるよ。でもそれほど多くない。コホッとするだけ、それでおしまい。でもあなたが言う他の問題は、それこそわたしたちが見ている問題ですよ。身体を固くするのも私たち、見ました。
3381 C: 身体が熱い。といっても、熱い、でも時にはンゴーと冷たい。水を見たら、すぐにそれを飲みたがる。 P: 現に、実際に飲みますよ。 C: でもお粥は嫌がる。母乳をその子が飲めば、それは悪くなっている。 P: それは私たちにはわかりません。ただ私たちは、その子が嘔吐するのを見るだけ。 C: なにね、確かに病気だわ。皆さん方も今日びの病気のことを話題にする。いざ誰かがそんな状態だと、もう驚いちゃうわね。 P: ほんとタイレよ。 C: でもこの脇腹の病気はどう?ときにはヒィーヒィーって(呼吸がゼイゼイするさま)。 P: タイレよ。 C: この場所に居座られているのよ。もし大人だったら、ここが我慢出来ないほど苦しいって言うでしょうね。でも、その子はどこが苦しくても言えないわね。というわけで皆さんはこの子を苦しめているもの、それを調えたいんですよね。なのにその子は何の病気か話せない。
3382 C: 話せないけれど、感じてはいる。だって、その頭も割れそうなんですもの。ところで薬(売薬(madawa2)はもらったのかしら。おしっこだって、ときには何時間も止まっている。 P: 私たちにはよくわからないわ。 C: (おしっこが)止められちゃったとは言わないよ、でも何時間も出ない。ときには本当にすごく熱いおしっこが出る。 P: タイレ。ときどきその子の母親が言ってる。 C: 熱いおしっこ。ときには色がついている。ターメリックみたいな色。 P: タイレよ。その子の母親が言ってる。熱くて、ただごとじゃないって4。 C: そして便もだけど、細い紐みたいな。 P: タイレよ。 C: 白い白っぽい紐状のね。もし私が、その子が血を排便していると言ったとすればね(私は間違っている)。でもその紐状の便、母乳をその子が吸ったら、即よ(便になる)。その子は ヌルヌルした便5を出す。さてときには嘔吐、その子がえずく。ゲロゲロ(fikifikifiki)ぶちまける。 P: そう。 C: (その子が)すぐに眠りに落ちてしまうのに気が付いた? P: 気がついていますとも。
3383 C: この子が病院で少し良くなるとしても、私が言うことを、あなたがた、ちゃんとやってちょうだいね。そんなに大事を言うつもりはないわ。本当に大層なこと、500シリングかかることになるよと言ったとすれば、私はあなたに嘘をついていることになる。この子はたった40シリングで治るわよ。 地下世界(kuzimu)のペーポーコマ(p'ep'o k'oma wa kuzimu6)と池のペーポーコマ(p'ep'o k'oma wa ziyani)よ。キツィンバカジたち(vitsinbakazi33)とつるんでいる。母乳が水みたいになる。乳房を膨らせて母乳を水みたいにするのは、ムドエ(mudoe25)、ジム(zimu34)、キズカ(chizuka35)、スンドゥジ(sundzi24)たちよ。本当に病人なのは、その母親なのよ。ドゥングマレ(dungumale)、ジム、キズカ、スンドゥジ、ムドエ。母親に憑いているライカ(laika61)もね。わかる?ねえ、この子はすごく圧迫されてるのよ。とくに脇腹が締め付けられてる。排便したかとおもったら、もう一杯になっている。 P: タイレよ。 (チャリ占い歌を歌う) C: 昨日始まったわけじゃない。
3384 P: もう三週間も経ったわ。今週が3週目よ。 C: もし私がこの子は(ニューニに)昨日、襲われた(つかまれた)と言ったら、嘘だよ。 P: だって、私たちが一緒にこの子と行きましょうと言ってからだって、今週で3週目よ。 C: もし(その子だけの)内側の問題だったら、今頃とっくに治っていたでしょうよ。 P: うう。 C: あるときには、良くなったみたいで(ahende utu dza pee80)、そう思うとまた、悪化(ni buu81)。良くなったかと見えると、また悪化。全身お湯を沸かしたみたいに熱い、あなたがたも、この子を冷たい水の中に浸けてやるほど。 P: タイレよ。そのとおりよ。 C: 布を水に浸けて、ときにはその子のここのところに押し当ててやる。 P: タイレよ。 C: ペーポーコマとムドエよ。なぜか、ときには、この子、ひとりで口を(何も食べていないのに)むしゃむしゃ動かしているでしょ。 P: ええ。 C: それはこの子の母親のもっている憑依霊ムドエよ。母親のペーポーコマも。そいつら憑依霊全員、母親の(もっている霊)よ。そいつら全員がここに(乳房のところに)腰をおろしている。 P: だから(子供が)母乳に触れると、病気になる。それ以外に何もないのね。それだけの問題なのね。
3385 C: あら、あら、私はシェラ(shera82)や憑依霊ディゴ人(mudigo91)の話はしませんよ。もし私が、重荷下ろしをなさいな、そうすれば子供は治ります、なんて言ったとしたら、私はあなたに嘘をついていることになりますよ。私の姉妹たちよ。この子はムルングの薬液(vuo11)で治るでしょうよ。だってペーポーコマはムルングのことなんだもの。 P: むう。 C: それとこれらのピング、あいつら大昔の憑依霊たち、太古の憑依霊、ドゥングマレ(dungumale56)、ジム(zimu)、キズカ(chizuka)、スンドゥジ(sunduzi)、ムドエ(mudoe)のピングだよ。だって、もし私が、ジネ(majine94)の治療をなさいなと言ったとしたら、あんた大金を無意味に失うだけでしょう。それでいて助からないまま。でも、ここムルングの領域で助かればいいのよ。 P: さて、ところで私はあちらの病院(キナンゴ病院)にいます。(仰ることを)調えるためには、私があの私の孫を連れてこないといけないのでしょうか。 C: 私が(それを決められる)知恵者だとでも? P: ああ、わたしはあなたが喜んで見に来てくださるのを、私が施術師に(病院で)お目にかかるのをお願いしているんです。 C: なに?その子供は第一子なの。 P: はい、最初の子供です。 C: やっぱり。私の見るところ、その子の母親は自分で決められる知恵者じゃない、ただ(他人に)同情の気持ちを抱かせるだけみたいなのでね。 P: むう。
3386 C: (占いで)その子が第一子だと見えてたのよ。彼女が3回、4回と出産経験があるわけじゃないと。 P: ああ、最初の子供なんですよ。あなたも、まるですぐ近くにおられたみたいです。だってあなたが指摘された通り、彼女はまさに仰るとおりの状態なんですもの、子供の母親は。 C: 仲間がそこにいれば知恵者なんですけど、仲間が出ていってしまうと、彼女ただただ途方に暮れるのよ。まだわかってないのね。だって自分の子供を見ると、まるでこの子はもう死ぬんじゃないかと思っちゃうんだもの。 P: まあ、彼女はこうした問題について知らないんだよ。 C: でも、もし私がこの子が今いるところにいたら、二度と呼吸しなくなると言ったとしたら、それは間違いよ。違う?それともそう? P: その子だけど、もしあなたがそこに着いたら、そしてもし病気から解放されたら、あなたがそこに着いたら、彼女(子供の母親)も知恵が戻って、問題も見てとるでしょうね。 C: たくさん食べ物を与えすぎたら、その子は吐く。さて、そこ(病院)から出されれば、治ることはそう難しいことじゃないわ。
3387 C: だって、ペーポーコマがこのまま進むと、最後にはガリガリに痩せて、まるでキルワ(chirwa95)になった子供みたいになる。その子を立たせてみたら、ここから腿が出てくる。ついには突然、例の咳にみまわれ、ねばねばした涎が出て、口の中が乾いている。でも そうなると冷水に浸した布を当てたって無駄。汗が身体の内部に出てしまうんだもの。 P: 私のために応急治療(hamehame96)をしてくれるだろう人、私のために応急治療をして、あの子を病院から出してくれる人。すぐにでもその人と一緒に行って、応急治療して、外に出せるように。病棟から出して、退院させるための応急治療を施してもらって。私に調えさせて。でもいったいどんなふうに何をしたら良いの? C: さて、私の応急治療(hamehame)はね、私の友よ、彼女にちょっとしたピング(pingu)、ペーポーコマのピングをあげるってものよ。それと煎じる薬(mihaso ya kujita)、あちらに入れてあげて、飲んでもらうの。あいつペーポーコマ、しっかりとね。さて、彼女のためにすべての憑依霊に対する唱えごとをしてあげる。ライカのちょっとしたンガタ(ngata)、子どもの母親に身に着けさせるやつね。それらの品々ぜんぶ、母親に結んであげる。だってその子供こそ、彼女が肩を揺すって踊ってあげる患者なんじゃない?違う?
3388 C: さて、それらの品々にも私に唱えごとをとなえさせてちょうだい。その後で、その子の母親に結んであげるのよ。そして(煎じる)薬だけど、その母親がすする際に、その子供にも飲ませてあげて。ああ、あのペンバの大ズカ(zuka bomu ra chipemba100)もいるよ。この女性はそもそもたくさん問題を抱えている人だわ。彼女自身がペーポームルメ(p'ep'o mulume45)について行ってる。ペーポームルメ、彼女には、ときに夢の中で彼女を犯す男がいるの。今、本人はここにいないけど、もしいたらそんなふうに話してくれたろうに。というのも彼女は多くの問題を抱えているんだよ、あんた。死んだ人々を、彼女は見てるし。それも憑依霊だよ。ああ、私はあなたに別の問題を話してあげようなんて言うつもりはない。子供が病気なのは、その母親がもっている憑依霊のせいなんだよ。 (相談者、席をはずして小屋の裏手のブッシュから5cmほどの小枝を数本折り取って戻って来る。それぞれが子供の治療に当たる施術師を代理している。) P: さて、あなたにこれらの施術師をお渡ししました(Chariに数本の小枝を差し出して104)。私のために薬液を調えてくれる施術師を見つけてください。 (以下、和訳省略。キナンゴ町在住の女性施術師たちが選ばれる。)