いつものように午前中の挨拶にチャリのところへ行くと、占いの客が2組、ひとつは「ジャコウネコの池」村のご近所さん。Jumaaの娘姉妹2人だった。里帰り中にチャリの占いを求めてやってきた模様。わざわざこんな遠くまで、占いに来たんだ。もう一件は、見知らぬ女性二人組。
(from diary Dec.18, 1993)
いずれもチャリは鮮やかに言い当てていく。チャリは最近nyama1がしきりとやって来てくれる。頭の調子がいい、などといっている。
占いにも好不調があるみたいで、頭の中にやってきていろいろ話してくれる憑依霊の状態次第でうまく行ったり行かなかったりするみたいだ。
占いの施術師: Chari Malau 相談者: Mulongo wa Jumaa(Mwero), and her elder sister
ここで紹介するのは一件目の占いだが、かなり立ち入った状況が次第に明るみに出されていくが、焦点はムロンゴさんの病気の赤ん坊(男児)の件。いろいろな問題が掘り出されてしまったが、とりあえずすぐに対処できるのが、ドゥングマレ、ジム、スンドゥジ等々の昔ながらの憑依霊。女性の乳房あたりに腰を据えてしまい、母乳を駄目にするのでそれを飲んだ赤ん坊が病気になるというやつらである。
この占いにおいては子供の母親の嫁ぎ先での問題など、いろいろな問題が明るみに出されるが、最終的に応急治療として提示されたのは次のような治療である。
ピング(pingu)の処方
母親には、ドゥングマレ(dungumale36)、ジム(zimu43)、キズカ(chizuka44)、スンドゥジ(sunduzi45)、ムドエ(mudoe46)のピングを胸に着ける。ペーポーコマ(p'ep'o k'oma)のピングを腕に。 子供にはペーポーコマ(p'ep'o k'oma)のピングを腕と足首に。キズカとムドエのピングを腕に。
ンガタ(ngata21)
ライカのためのンガタ。ライカの薬、草木を砕いて短冊状の布に包み腕に巻く。母子それぞれに。
薬液(mavuo28)
母親に。上記の憑依霊の草木はミックスしてよい ライカのための池(ziya27)は子供とともに浴びる ドゥルマ人のための薬液は、上記の治療が終わった後に。
煎じ薬(mihi ya kunwa54)
ライカの。母親に。
[鍋(nyungu)治療]
ドゥルマ人のため(以上がすべて終わった後) 参考: ドゥルマ人のための鍋(事例) 参考: 鍋治療について
これだけでも、けっこう大変だ。 その後に、子供の病気が良くなれば、約束の履行が待っている。 ライカについては「嗅ぎ出し」、ドゥルマ人については徹夜のンゴマである。
最後に、施術師の選択であるが、相談者が小枝を数本とってきて、占い師がその一本一本を嗅いで、治療に当たる施術師を選ぶという形をとる。どの小枝がどの施術師かは、占い師にはわからない。今回の占いでは、チャリが選んだ小枝は、なんとチャリ自身を指していた。
6399~6400 病人が男性であり、またまだどこが痛いのか自分で訴えられない言葉をしゃべれる前の乳幼児であること、すでに病気が長期に渡っていることなどを言い当てる。それに続く部分から訳す。
Chari(C): さて、この身体が高熱なのは、あなたわかってるわね。 Woman(ムロンゴの姉 W1): 身体が熱いのはしっかり見ています。 C: そして激しく泣くことは? W1: よく見ます。 C: で(何かに驚いたように)ビクッとする。 W1: ほんとうにタイレ(taire55)。 C: 夜中に大騒ぎする。 W1: タイレよ。 (チャリ、歌い、占いの瓢箪(chititi56)を振り、理解不能な言葉をしゃべる) C: でときには、このお腹の張り(膨満(kuodzala, 字義通りには「何かで一杯になる」))、張ったりしないかい?それとも... W1: ああ、まさにまさにまさにタイレよ。
C: (子供の)小さいお腹は張る、小さいお腹はグルグル唸るよ、あなた、そしてときに塊がお腹の中で成長する。 W1: タイレ、タイレ、タイレ。 C: なにも喜んで食べようとしないわね、そうでしょ、ときに吐いてしまうこともあるんじゃない? W1: タイレそのものよ。なにかをほんの少し食べて、それをすぐに吐いてしまう。吐き戻すっていうんじゃないけど、オエッとしている。 C: オエッと吐きそうになるだけね、吐きそうになるだけ。 (チャリ、占いの瓢箪を振り鳴らしながら、理解不能な憑依霊の言語でしばらくしゃべる) C: さて、ご傾聴くださいと申しましょう。 W1: ムルングの。 C: まるで何日も便通がないみたいなこともあるのでは? W1: まさにタイレそのものよ。 C: ときとして便通がない、全然ないってことも。(ギリアマ語で)もし間違っていたら、さっさと否定してね。 W1: タイレ、タイレ、まさにそれよ。 C: だって、もし私があなたに下痢の話をしたら、ねえ... W1: ああ(否定の意味で) C: 下痢もくるわよ。でも今、私があなたにフャラフャラフャラ(流動的なものが流れ落ちるさまを表す擬態語)なんて言おうにも、あなた、私にはそれは与えられてないの。 W1: タイレ、タイレ。
C: 私が与えられたものは、小さなお腹が張っていることだけ、グルグル唸ることよ。 W1: タイレよ。 C: 燃えているわ、あなた。ときにうとうとして、ひたすら眠る。 W1: タイレ、タイレ、タイレ。 C: さて、身体は沸騰させられる、かと思うとンゴー(ngoo57)冷たくなる。 W1: タイレ、冷たくなる。 C: ときには、この汗。 W1: まさにタイレそのものよ。タイレそのものよ。まるであなたその子といっしょに寝たことがあるみたい。 C: ときにはその母親さえ拒絶する。 W1: タイレ、タイレ、タイレ。 C: 母親を目にしただけで、いきなり大泣き。 W1: タイレそのものよ、それ。 C: ときには身体が熱くなると、目が、なんて言うかな、白目をむく。ガルガルガルってね(galu58)。 W1: まさにそのとおりよ。 C: 身体から力が抜けて、関節という関節がだらっと。起き上がらせるのも、引きずるみたいにしないと。 W1: タイレ。どうしてこの子はこんな風なのって尋ねてしまうほどよ。そうタイレよ。私もその場にいて、見たのよ。休む暇もないのよ。
C: で、あなたは言うのね。「何を考えているの、あんた」って。 W1: そう。タイレよ。私は言ったの。「あなた、何を考えてるの」って。 C: さて、ね。「私に何を考えろって?薬なら家にあるし」 W1: ねえ。「私に何を考えろって?年長の仲間はあなたがたでしょ。腰布をしっかりお巻きなさい(頑張って病人を治しなさいよ)。」 C: 「私はいったいどうしたらいいの?」 W1: 「私はいったいどうしたらいいの?」そういったのは彼女本人よ。そうまさにタイレよ、それ。 C: (W1といっしょに来た連れの女性に向かって)あなたの子供でしょ、あなた。 W1: 彼女の子供よ。タイレよ。 Mulongo(W2): 私の子供です。 C: 私、この人の子供だって言ってないわよね。いいえ、彼女の子供じゃないわ。あなたの子供よ。 (チャリ、歌う) C: オエオエして、口をむしゃむしゃさせるわね。 W1: ええ、タイレ。 C: でも、でも、力なくぐったりぐったり(reje reje59)。 W1: ぐったりぐったり。鎖みたいに引きずり上げる感じ。タイレよ。 C: ンゴーと冷たくなるわね。あなた、かわいい妹よ。 W1: 冷たくなるのよ。こちらは熱い、一方、こっちは冷たい。まさにタイレよ。 C: 冷たくなって、何かに驚いたみたいにビクッとする。寝ていて、すごくびくってするわね、あなた。 W1: タイレよ。もう治ったかと思うほどだったのに、外に出たがるほどだったのに。タイレよ、それ。
C: ねえ、ときに突然、不安そうになったり(落ち着かなくなったり)しない? W1: タイレ。 C: 不安げになる。母親にもそっぽ。 W1: タイレ。 C: さて、おっぱいをあげようとしても、嫌がる。 W1: タイレよ。 C: 理由がないのに突然泣き出す。独りで泣き出す。 W1: ええ、泣く。タイレ、タイレ、タイレ。まさにその通りよ。 C: そこで、あなたがた何を探し求めていらっしゃるの。もし私がお話するとしたら、病気のこと。病気のことをお話するなら、私たち午後いっぱいかかるわ。だって、もし胸のことだったら、そのうち、そこに(憑依霊たちが)腰を据えてしまうでしょう。もし脇腹をみたら、プウェ、プウェ、プウェ(pwepwe60)って。ここの中に腰を据えられてるのよ。 W1: タイレよ。さあ、それ(病気)を探して行きましょう。 C: 身体、熱がでると、これ(心臓)が打つのよ。ダダ、ダダ、ダダ。 W1: タイレそのものよ。あの子を食べている病気はこれだって、言ってくださらない?乳房じゃないの? C: あなたたちは乳房が病気だとおっしゃる。 W1: 乳房が。タイレよ。 C: 違うわよ。 W1: じゃあ、私たちに問題を話してください。子供はいったい何に苦しめられているのか。私たちは(その子を)苦しめているものを求めているの。私たちは探し求めて、これだよって言ってもらいたいの。
6405 (チャリ、歌う)
W1: だって、薬はたくさん(処方された)。注射は、子供のお尻まで痛い目にあわせた。 (チャリ、占いの瓢箪を打ち鳴らしながら) C: (子供の母親ムロンゴを指しながら)この人が病気なのよ。 W1: この人が病気だって? C: ねえ、ここの場所なにか感じていることない、あなた? Mulongo(W2): 感じてます。 C: そしてこの頭痛とちょっとした目眩、したことない? W2: 頭痛はひどいです。一昨日、病院に行ってきたばかりよ、あなた。 W: そもそもこの頭痛のせいで、この人、編み髪を切ったのよ。 C: 病人はこの女性自身よ。なのにあなた方、子供が病気だとおっしゃる。でも病気なのはその子の母親なのよ。彼女、もうすっかりうんざりしてる。うんざりして、泣きたいほど。悲しんで、心は破れちゃった。ねえ、彼女はすごく悲しんでるのよ、あなた! W2: タイレ。この心臓こそ病気そのもの。だって、いつも破れるんだもの。 C: でもこの頭の、ここ内側は... W: 頭、そのピング、それそれ。そこよ。そこ。それ(そのピング)は外しちゃだめなの。でも編み髪はすでに切りました。 W2: 頭のここに着けているピングのことよ、ねえ。
C: で、頭痛の件は正しかったの? W2: さて、そこよ。「ジャコウネコの池」村にはもう戻っていたの。で一昨日よ、頭痛が私を打ち倒したの。この人(彼女の姉)が(病院に)連れて行ってくれたの。病院のお薬を見に(処方してもらいに)行ったのよ。 W1: あの頭といったら。この人、編み髪を施していたの。でも病院に着いたときには、まるで気の触れた人だったわ(編み髪を切り落としてボサボサになっていたために)。 C: まず第一に、子供のこの母は、「嗅ぎ出し(kuzuza61)」はしてもらったの? W1: ああ、まだです。 C: まだ「嗅ぎ出し」は済んでないのね。生まれてこの方、ンガタ(ngata21)を結んでもらったことはまだないの? W2: ああ、ライカ(laika63)のンガタならもってるわ。 W1: もってるの? W2: 一つはこれよ。 C: そいつ(その憑依霊)は疲れているよ、ああもう。 W1: ライカがですか? W2: 大昔のライカなのよ。ウェニェワおばあさんの頃のライカよ。 C: この人はずっとンガタを結ばれてきたのね。小さい頃から。ンガタを結んでもらってこうして... W2: もう飽き飽きするほど。 C: 地下世界のペーポーコマ(p'ep'o k'oma81)だね。 W1: タイレそのものよ。そもそもね...
C: 地下世界のペーポーコマ、池のペーポーコマ。子供の足の裏がどうしようもなく冷たくなる。子供がどうしようもなくぐったりする。キズカ(chizuka44)、スンドゥジ(sunduzi45)。(乳房の中で)母乳が一杯になって、水になる。 W1: 水になって、いっぱいに張る。それはタイレです。 C: ドゥングマレ(dungumale36)、ジム(zimu43)、キズカ、スンドゥジ、ムドエ(mudoe46)。(それらのピングを)このあたりに(胸の乳房の上に)。そして子供にはペーポーコマのピングをここに、このあたりとこのあたりを巻くように。そしてキズカのピングを腕に。この子は吐きそうにオエオエして、あなたが可哀想に思うほど。それでいてお腹には何も入っていない。 W1: そう。タイレそのものよ。 W2: ねえ、それらは随分昔に指摘されたことよ。 W1: この人についてね。お聞きになった?この私の症状ってば... C: 以前からの問題なのよ、あなた。すっかり疲れている(げんなりしている)。ただ今のところまだ、彼女は病気にはなっていない。 W1: 刺をもってきて自分を突くように言われたような... C: 身体も痛くなるよ、その子供は。もし大人だったら(さぞかし痛みを訴えただろうに)。でもその子はあなたに何も言わない。でもライカもすでに問題を山積させている。 W1: ライカが? C: ライカは子供の母親のなかに問題を積み上げて、それが子供たちに向かっている。 W1: 子供の方に逆流した? C: 子供「たち」の方にだよ、一人の子供にじゃない。
W1: 子供たちの方に? C: 他の子供たちも健康じゃないでしょ? W1: タイレ、タイレ。他の子たちも確かに健康じゃないわ。 (チャリ、占いの瓢箪を振り鳴らしながら、口笛を吹く) C: でも、もし私がなにか言いたいとすればね、はあ、私はあなたに、その後であなたが調えるべきことをお話するわ。 W1: 私が調えなきゃいけないこと。 C: まあ、意外と別の調えなきゃいけない問題がやってくるかもだわね。でもそれは後回しになるでしょうね。でも、その病気を主に引き起こしている当のもの、病気を悪化させている原因になっているもの、私たちはそれについて話すことにしましょう。 W1: 応急治療(hamehame)のことから始めませんか。それ(チャリが病気の主原因と述べているもの)はそれから。 C: そもそもこの女性には、随分以前からの憑依霊ドゥルマ人(muduruma48)がいるわ。 W1: タイレそのものよ、それは。そいつこそが...、タイレよ。 C: あなたドゥルマ人の鍋25の湯気浴びはしましたか? W2: ああ、私はまだ何もしてもらっていないわ。 W1: この人はまだ何もしてもらってないの。 C: 憑依霊ドゥルマ人の布、身にまとったことは? W2: いいえ。 C: あなた、ドゥルマ人のピングももってないの?その憑依霊は随分昔からいるやつなのに。 W1: タイレよ。だって、もしこの人がしてもらっていたら...
C: そもそも、あなた自身、その腹部の張り、ときどきお腹が張るでしょ。 W2: 実際、今日もその友人(姉W1のこと)に聞いてもらったばかりよ。お腹の中に子供がいるんじゃないかって。 W1: 彼女たった今やって来て、そう言ったのよ。 C: お腹がとっても張る。ときにはこのあたりが重苦しい。そしてこんなふうにすると、まるでお腹の中にヘビがいるみたい。 W2: ええ、そうよ。タイレそのもの。 W1: ほんと、ついさっきここに来る途中で、この人がそう言ってました。 W2: 私は、ここ私のお腹の中に、なんと、子供がいるわって言ったの。 W1: 便意についても言っていい?(便意を感じて)その場所に着くと、便意は消えているって。 C: この人はしたたかに投げ倒されてるわね。よく調べてみてご覧なさい。あなたはしたたかに投げ倒されている。あなた、じっと座っていても... W1: あの憑依霊ドゥルマ人(ムドゥルマ(muduruma48))のせいなんですか? C: そうよ。そしてそいつこそ、こっち(彼女の子供)にも逆流したやつよ。子供の小さいお腹が張っている。あなた方、ニューニの治療をしても無駄よ、病院の治療を求めてもくたびれもうけ。違うのよ。母親がもっている憑依霊たちなのよ。そもそもこの人自身、ンゴマの約束を随分以前にしてたのでは。 W1: タイレそのもの。それ、タイレよ。タイレよ。昔、約束してる。 C: 彼女が(たぶん夫が仕事をしている)モンバサに行ったあとも、ンゴマ(の約束)は放置されたまま。 W1: タイレよ。約束は(それ以前に)すでに置かれていたわ。それはタイレよ。 C: おまけにンゴマの約束がなされたその時期に、子供は病気だったんじゃない?でもその子じゃないけど。
W2: その子じゃないわ。その子の兄よ。 W1: その子じゃない。別の子よ。 C: というわけで、そう今や、そいつの(憑依霊ドゥルマ人のための)ンゴマ(が懸案の問題)というわけね。 W1: はい。タイレそのものよ、それ。 C: (ドゥルマ人との約束の)ンゴマ。それから「嗅ぎ出し(kuzuza61)」のカヤンバ(kayamba90)。ライカ(laika)の嗅ぎ出しね。 W1: それとライカ... C: ドゥルマ人、そいつが(現在)必要としているのは鍋(nyungu25)よ。ライカは池(ziya27)。彼女とその子供、一緒に置いてあげてね。彼女にも、子供にもそれぞれンガタ(ngata21)をあげて。さらにその際に、彼女に煎じる薬(mihaso ya kujita12)をあげてね。それとペーポーコマとドゥングマレ、そしてジムとキズカとスンドゥジとムドエ。 W1: 一人ひとりに必要なの... C: 彼女に、そいつらの薬液(vuo28)とそいつらのピング(pingu22)をね。ところでそれらのピングはここに(胸のところに)着けるのよ。子供には(ピングは)二つだけよ。ムドエとキズカね。でも彼女にはここ(胸のところに)5つよ。そしてペーポーコマのピング、彼女と子供にね。それで子供を治すことになるわ。嗅ぎ出し(kuzuza)はまずは置いておきます。でもドゥングマレ、ジム、キズカ、スンドゥジ、ムドエ、地下世界のペーポーコマと池のペーポーコマ(等のピングと薬液)は、調えてちょうだい。おわかり?そいつらのピング、それとライカにはンガタ(ngata)とキザ(chiza26, 池(ziya)の別名)。たぶんそのうちに嗅ぎ出しもすることになるでしょうけど、ねえ、今日び、嗅ぎ出しは嫁娶り(ulozi)だものね(費用がかさむと言う意味)。 W1: 嫁娶りよ、ほんとに!
C: でも、このキザとンガタをもらったらね、問題は小康を得る(kuhenda baha)でしょうよ。 W1: あいつらの薬液(mavuo)、薬液は混ぜちゃっても? C: ええ。でもそのあとでドゥルマ人のための薬液(vuo)をあげてね。子供のお腹が唸るでしょ。 W1: 唸ってるわ。それ、タイレそのものよ。 C: 唸る、そして張る、さらに片側が固い。上の方のこの辺り、片側だけ固い、固い。 W2: 見れば、大便がいっぱい詰まっている(便秘したみたいに)。食べた後にはね。 C: 今に膨れてくるよ、この子供。 W1: タイレそのものよ。そもそも膨れること... C: どんどん膨れてくる。 W1: そもそも膨れるってことなら、これまでにもうあったの。これから膨れてくるっていうんじゃなくて。このあたりね、こんなふうにすると、もう塊よ、ここ、ここ。タイレそのものよ、それって。私たち言い合ったものよ。「みなさん、この張りはいったい何でしょう。どうして...」 C: ああ、単に血を吸われてるだけよ、母親のもつ憑依霊たちによって。 W1: タイレよ、タイレ。だって... C: だって、ときにはフゥェー(hwee94)って(顔色が蒼白に)。 W1: 私自身がその子にこんなふうにして言ったわ。「なんでこの子はこんなふうに膨れているの、皆さん。いったい何の塊なの?脚だとでも言うの?」
C: 病気なのよ、そして病気になるのよ。だってときにはこの脇腹(肋骨の部分)がきつく(gii)つかまれる。胸もきつく、腰もきつく。さて脚も、その子を立たせようとしても、立とうとしない。 W1: タイレよ。そこ、脚の場所。 C: その子はいろいろ感じている。(しかし子供はしゃべれないので)あなた方は、身体に熱があることがわかるだけ。「私の子供の身体は熱がある。」 W1: タイレです。それは。 C: その子は苦痛を感じているのよ。 (チャリは占いの瓢箪を振り鳴らしつつ口笛) C: 私は「薬(muhaso12)」(ここでは妖術をほのめかす言葉として)の話はしませんよ。あなた。その子の母親がもっている憑依霊(p'ep'o)のせいなのよ。 W1: 母親がもっている。 C: そう、母親がもっている憑依霊たち。でも「とても汚く(chinyenye nyenye)(とてもひどく)捕らえられることもある。あなたご主人の実家には戻ったの? W2: ええ。 C: 今もそちらにいるの? W2: 今はこちら(ジャコウネコの池村)。この問題のせいで戻ってきたのよ。 W1: だって、あちらにはこの問題について、頼れる人がいないのよ。 W2: この問題で頼れる人はいないのよ。 W1: 人がいない、で自分の実家に行った方がましと。 C: 人がいないのね、そもそも。そこのご夫人(たぶんW2の夫の母?)ご自身が、あれらの憑依霊たちとうまく折りあわないのかしら。 W1: まったく、全然。あれらの憑依霊たち、そもそも...タイレよ。
C: もし互いに治療しあったとしても、治しあうことにはならない。 W1: タイレそのものよ、それ。タイレ。その人とは彼ら(憑依霊たち)はうまく行かないのよ。でいて、彼女は別の施術師は嫌だという。彼女はその人がいいのよ。であいつら憑依霊たちはお互いに理解し合えない。(浜本注: ちょっと何言ってるのかわからないんですが95) C: 彼女もまったく、くたびれもうけだわね。 W1: うう。そこまさにタイレそのものよ。 C: さて、いったいどうして家にいるのに、そこに居ながら、そこに居るのか居ないのかみたいな(浜本注: 自分が所属している場所でありながら、居場所がない感じを言い表すドゥルマ風表現)? W1: タイレよ、タイレ。タイレそのものよ、まさに。 C:(W2に向かって) なんと、あなた今にも、もう自分の子供たちのところで暮らしましょうとでも言わんばかりでしょ。 W2: タイレそのものよ、それ。 C: なんと、あなた、もう誰とも関わり合いになりたくない?あなたの夫とも、もうたくさん、みたいな。 W2: タイレそのもの。 (チャリ、占いの瓢箪を振り鳴らし、その後、大きなため息) C: あなた、薬(mihaso、ここでは妖術のほのめかし)に祈願でもされたんじゃないの? W2: (笑いながら) ああ、そのことは知らないわ。薬のことは知らないけど、いずれにせよ、私はひどい目に遭ってます。 C: 地下世界のペーポーコマ、池のペーポーコマ、ドゥングマレ、ジム、キズカ、スンドゥジ、ムドエ。大事なのはこいつら憑依霊たちよ。そいつらは.... W1: そいつら?
C: だって、その子自身、すごく下痢したとしてもおかしくないわ。そのお腹がいっぱいいっぱいに張っているのがわからないの? 下痢が起こるようになっているのよ(Be ni fyokpwa yo yiundwayo. 浜本注: ku-unda はスワヒリ語で「作る、組み立てる」を意味する。「組み立てられることになっているものが下痢よ。」=「結果として下痢になるのよ」) こちらに越させたほうがよい。で、こちらに連れてくる、こちらにね。その子をかかえあげてごらん。全然、健康な子供らしくないでしょ。ンゴー(冷たい)。あなたは、その子を「追い越して」しまった(wamuchira96)と言われてしまうほど。だってその子の脚は冷たくなる。脚のこのあたり冷たくなる。このあたりまでも冷たくなるだろうよと言われるかも。ああ!そのあたりはすでに冷たくなってるじゃない。今やほどなくンゴーとなる。全身がンゴー。 W1: 「ああ、この私の子供は明日には死んでしまう」とあなたに言わせるほどにね。 C: そこで、もしその子が突然、身体じゅうがぐったりぐったりする症状が出てきて、見ただけで病気そのもの、なのに身体は熱くない。 W1: うう、まさにその通りなのよ。 C: ああ。私はさらにずっと先まで占いを打ち続けるつもりはありません。だって、問題は以上なんだもの。あなたにさらに多くの問題を話すつもりはありません。でも、いつかはこの人は「嗅ぎ出し」をしてもらわないとね(azuzwe)。それに瓢箪子供(mwana wa ndonga84)はもう手に入れたの。 W2: 瓢箪子供はまだです。 C: なに、いままで瓢箪子供のこと言われたことがないの? W1: ずっと以前に私も彼女に言ったんだけどね。でも、私自身があちら(嫁ぎ先)で大変な状況だったもので。でも瓢箪子供のことは確かに彼女、言われていたわ。瓢箪子どもと、ムルングの黒い布だったっけ。 (W1、施術師の選択をしてもらうために、ブッシュに小枝を探しに行き98数本の小枝を持ち帰る) C: これら、生の小枝かい? W2: もってくるのは生の小枝じゃないと。あなた死んだ施術師たちは知らないでしょ。 W1: そんなこと知らなかったもの。生じゃないといけないのね。 (W1再び出ていく。こんどは生の小枝をもって戻って来る)
6415~6416 チャリ、一本の小枝を選び出し、それが治療に当たる施術師だと宣言。その後、W1はすでに相談に行った別の占いのことを話す。チャリの占いの結果と一致していたと。その占いで、選択された施術師の治療はすでに受けたが、失敗したなどと話す。結局、今回チャリが選んだ小枝は、チャリ自身だったので、チャリが治療に当たることになった。
この占いの翌日、チャリはムロンゴに「飲む草木54」と、薬液(vuo)に用いる草木を届けた。ンガタもその際に結んだ。私は別のイベントでこちらには参加できず。残念。
ピングは制作に時間がかかるため、チャリが家で作り、完成したピングを占いの3日後に届けに行き、私はそれに同行した。
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