憑依霊の種類

(まだまったく未整理のデータをランダムに置いていっています。そろったら分類して整理する予定)

ニューニ(nyuni)または「上の霊/動物(nyama wa dzulu)」

厳密には憑依霊の仲間には入らないかもしれない。もっぱら乳幼児を攻撃し、ひきつけなど突発的な症状を引き起こす。慢性的な衰弱などがこうした存在の攻撃のせいだとされることもある。ニューニに対する対処、治療にあたるのは憑依霊の施術師(muganga wa nyama, muganga wa p'ep'o)ではなく、妖術系の施術師などと同様に金銭による購入によって、施術の知識を手に入れた者である。

ニューニについて

ニューニについての概説とニューニの施術師たちとのインタビュー

スンドゥジ他、昔からいると言われている憑依霊

誰もが昔からいる憑依霊だと同意する一群の憑依霊がいる。でもカヤンバなどではあんまり活躍しない。上記のニューニと同様に、これらの憑依霊は母親にとり憑いて、乳幼児に健康被害を及ぼす。乳幼児の健康被害は、ドゥルマでも深刻な問題なので、ニューニを特徴づけるひきつけ発作ほどの緊急性はないものの、この霊たちについての治療もフィールドで比較的頻繁に遭遇する。 ただ、その治療は護符(pingu1)などを作成して与える、飲み薬の処方、浴びるための薬液処方程度で、簡単なものである。

スンドゥジたち

一群の似たような憑依霊たちの紹介、施術師による説明、占いでの語られ方、その治療の一端などを示します。ニューニのページを作った流れで、同一問題系のこいつらが登場。なぜか周辺的なものばかり扱っていて、本丸が遠くに霞んでいます。

以下未整理のメモ

2004年の段階でのまとめ(要修正) 以下の分類は施術師Cのバージョンである。 他の施術師たちの見解と大きく異なる点がある場合はその旨、注記した。 細かい差異についてはいちいち言及しない。

内陸部の霊 nyama a bara

水辺の人々 achina maziyani

ムルング童子 mwana mulungu (ムルング=雨をもたらす至高神) mwana toro, mwana duga, mwana mukangaga etc.(水辺の草) mwana nyoka (蛇) mwamunyika(雨をもたらす天の蛇) vunzarere() marera (養育者) mwanyika (ブッシュの者 蛇)

mulunguzi (神の僕)

pepokoma (koma 祖霊) pepokoma wa kuzimu (kuzimu 地界=死者の世界) pepokoma wa ziyani (ziya 池、沼)

chitsimbakazi(女性、小人 ku-tsimba kazi 仕事を割り振る) chitsimbakazi cha ziyani chitsimbakazi cha mbinguni( mbinguni 天) mukusi(laika とも kusi 旋風) muyemuye

(以下、昔ながらの霊たちといわれるもの)

怪物グループ dungumaro(怪物) zimu(怪物) chizuka(泥人形、上の霊 nyama a dzulu として別扱いのことも) gojama(怪物、イスラム系に分類する人も)

sunduzi

mudoe murima ngao

kanyango

kaniki

muchirima(山の人、太鼓の名称とも)

fyulamoyo(心を曲げる、妖術の一種)

chiyuga aganga(施術師泣かせ)

mwavitswa(気違い男)

murisa(牛飼い、 muduruma の一種とも)

luki

digozee(老人、muduruma の一種とも)

musichana(少女、muduruma の一種とも) kasichana

mwahanga(葬式男、しばしばイスラム系の霊として扱われる)

kadongo(土塊)

kare

gasha(占いをつかさどる。施術師Cの中心霊のひとり)

mandano(黄疸)

(以下、諸民族の霊) mugala(「ガラ(オロモ)人」)

muboni(「ボニ人」)

mudahalo(「ムダハロ人」)

mukorongo(「コロンゴ人」? korongo 自体は「サギ」)

mukoromea(「コロメア人」?)

mukp'aphi(「ムクァビ(農耕マサイ)人」)

maasai(「マサイ人」)

mbilichimo(「ピグミー」ただし空想上の小人とも)

muganda(「ガンダ人」施術師Cのみ)

mugiryama(「ギリアマ人」) sandzuwa(占いをつかさどる、太陽とも) pini(火渡り大好き、施術師Cの持ち霊のひとり) chiroboto(蚤)

muduruma(「ドゥルマ人」) kalumengala (輝く男 male) kasidi(無礼者 female) marambo(飾り物、銀河 kasidi の別名とも) mugayi(貧乏人) nyoe(ばったの一種) mashaka(難儀・不安) magendoro(浮気相手?) bwana kaseja murisa(牛飼い 独立の霊とも)

mudigo(「ディゴ人」) (以下、ディゴ・グループの霊) pungahewa(風送り) ichiliku shera(箒) mwadiwa(長い髪) muchetu wa koma(気違い女) muchetu wa mizigo(重荷女) chibarabando(おしゃべり) rero ni rero(今日中にすませろ)

mukamba(「カンバ人」) gologoshi ngai(カンバにおける至高神)

mukavirondo(「カヴィロンド人」)

munandi(「ナンディ人」)

mumanyenya(「マニェニャ人」?)

musambala(「サンバラ人」)

mungindu (「ムンギンドゥ人」) mutumwa

munyamwezi(「ニャムウェジ人」)

mumwakonde(「マコンデ人」)

mumawiya(「マウィヤ人」?マコンデ人の別名とも)

muzigula(「ジグア人」)

muzaramo(「ザラモ人」)

musegeju(「セゲジュ人」施術師Cのみ)

(ニャリ・グループ) dena(ギリアマの老人、7つの頭を持つ蛇、ニャリ一族のスポークスマン)

nyari nyari nyoka (蛇) nyari chipinde(ku-pinda 捻じ曲がる) mwalukano (lukano 血管) nyari ngombe(ウシ) mwafira (コブラ) boko(カバ) nyari njinja njunjula chiwete(いざり) nyari chitiyo(近親相姦)

(ライカ・グループ) 上でディゴ・グループで言及した ichiliku は laika と瓢箪を共有する

laika laika dondo(大きな乳房 chitsimbakazi の別名とも) laika mukangaga(葦) laika manyoka(蛇) laika tophe(泥) laika mwafira(コブラ) laika mbawa(ハンティング・ドッグ) laika tsulu(土丘) laika zuzu(愚か者) laika mwendo(速度) laika jaro(旅) laika chiwete(不具、片側人間) laika chitiyo(近親相姦) laika gudu(ちんば) laika bingiri laika muzuka(社) laika chifofo(癲癇) laika nuhusi(驚かす者) laika tunusi(怒りっぽい者) tunusi(独立の霊とも) tunusi mwanga (ku-anga とりつく、襲う) laika chibwengo(laika tunusi の別名、あるいはlaika gudu の別名とも) laika chigwengwele laika makumba(denaの別名とも) laika mukusi(つむじ風 laika mwendo の別名とも)

 

海岸部の霊 nyama a pwani

(以下諸民族の霊) mwarabu(「アラブ人」) mwana pepo magana(100シリング) merigana(100隻の船)

mubarawa(「バラワ人」) matari(小型の太鼓)

bulushi(「バルーチ人」)

musomali(「ソマリ人」)

mupemba(「ペンバ人」) mupemba jabale burusaji(ペンバ人のパートナー、ペンバ人と同時に治療) etc.(very many)

baniani (「バニヤン商人(インド人)」)

muzungu(「白人、ヨーロッパ人」) muzungu wa keya(英国アフリカ植民地正規軍) muzungu wa mumiani(採血白人) mwalimu jerumani(ドイツ人、Samburu近辺のドゥルマ人のあいだで人気) mwalimu italiano(イタリア人、ドゥルマではギリアマ地方にいっぱいいるとの噂のみ)

(以下、導師系) rohani

mumanga musaji

mwalimu sorotani

mwalimu kuruani

mwalimu sudiani pepo mulume kadume tsovya sudiani maka

mwalimu maskati

mwalimu musafiri

mwalimu gojama(内陸系の霊に入れられる場合もある)

mwalimu jamba

(ジクル系) zikiri zikiri maiti zikiri maurana

(ジネ系) ジネ系の霊は、妖術使いによっても使役されるので、治療体系は他の霊たちとは異なる。 jine jine tsimba jine makata jine panga jine wembe jine mwanga jine ng'ombe jine bahari jine chipemba jine bara wa chimasai

 

(世界導師 mwalimu dunia) mwalimu dunia bara na pwani(内陸と海岸) mwalimu jabale(岩石導師) kalimanjaro(キリマンジャロ?) mwalimu jinja

 

 

(参考まで) 上の霊 nyama a dzulu

ニューニ nyuni で代表されることもある 鳥の霊であるとも言われる。子供にヒキツケなどの症状を引き起こす。 子供に直接とりつくこともあるが、多くは母親にとりついている者が、彼女の子供の病気を引き起こす。 治療体系は、上記の憑依霊とはまったくことなり、自ら霊にとりつかれていなくてもだれでも施術師になることができる。 子供を捉えている霊に、子供を解放させるのが基本的な治療だが、悪性の場合(女性が産む子供を次々に殺してしまうといった) は母親にとりついている霊を除霊 kukokomola する必要がある。

 

注釈


1 ピング(pingu)。薬(muhaso:さまざまな草木由来の粉)を布などで包み、それを糸でぐるぐる巻きに球状に縫い固めた護符2の一種。
2 「護符」。憑依霊の施術師が、憑依霊によってトラブルに見舞われている人に、処方するもので、患者がそれを身につけていることで、苦しみから解放されるもの。あるいはそれを予防することができるもの。ンガタ(ngata3)、パンデ(pande4)、ピング(pingu1)、ヒリジ(hirizi5)、ヒンジマ(hinzima6)など、さまざまな種類がある。ピング(pingu)で全部を指していることもある。憑依霊ごとに(あるいは憑依霊のグループごとに)固有のものがある。勘違いしやすいのは、それを例えば憑依霊除けのお守りのようなものと考えてしまうことである。施術師たちは、これらを憑依霊に対して差し出される椅子(chihi)だと呼ぶ。憑依霊は、自分たちが気に入った者のところにやって来るのだが、椅子がないと、その者の身体の各部にそのまま腰を下ろしてしまう。すると患者は身体的苦痛その他に苦しむことになる。そこで椅子を用意しておいてやれば、やってきた憑依霊はその椅子に座るので、患者が苦しむことはなくなる、という理屈なのである。「護符」という訳語は、それゆえあまり適切ではないのだが、それに代わる適当な言葉がないので、とりあえず使い続けることにするが、霊を寄せ付けないためのお守りのようなものと勘違いしないように。
3 ンガタ(ngata)。護符2の一種。布製の長方形の袋状で、中に薬(muhaso),香料(mavumba),小さな紙に描いた憑依霊の絵などが入れてあり、紐で腕などに巻くもの、あるいは帯状の布のなかに薬などを入れてひねって包み、そのまま腕などに巻くものなど、さまざまなものがある。
4 パンデ(pande, pl.mapande)。草木の幹、枝、根などを削って作る護符2。穴を開けてそこに紐を通し、それで手首、腰、足首など付ける箇所に結びつける。
5 ヒリジ(hirizi, pl.hirizi)。スワヒリ語では、コーランの章句を書いて作った護符を指す。革で作られた四角く縫い合わされた小さな袋状の護符で、コーランの章句が書かれた紙などが折りたたまれて封入されている。紐が通してあり、首などから掛ける。ドゥルマでも同じ使い方もされるが、イスラムの施術師が作るものにはヒンジマ(hinzima6)という言葉があり、ヒリジは、ドゥルマでは非イスラムの施術師によるピングなどの護符を含むような使い方も普通にされている。
6 ヒンジマ(hinzima, pl. hinzima)。革で作られた四角く縫い合わされた小さな袋状の護符で、コーランの章句が書かれた紙などが折りたたまれて封入されている。紐が通してあり、首などから掛ける。イスラム教の施術師によって作られる。スワヒリ語のヒリジ(hirizi)に当たるが、ドゥルマではヒリジ(hirizi5)という語は、非イスラムの施術師が作る護符(pinguなど)も含む使い方をされている。イスラムの施術師によって作られるものを特に指すのがヒンジマである。