(1987年のフィールドノートより)
ズニ(ズニ・ボム)39 治療に必要な品: 白い雄鶏(除霊用?) 黒、赤、混色、カタグロトビ色(治療用?) 護符(pingu)作成(母親の胸、子供の手足(一本の紐でつなぐ)
キルイ(chilui40)についても言及あり。詳細なし。多くの人はキルイはズニの別名としている
妻が、ニャグ、ズニ、キルイをもっている場合、夫婦とも婚外の性関係を禁止される。 それによって子供がニャグなどに捕らえられ、ひきつけを起こす その治療法(kuvunga)
しかし、なんと!夫の方は予防法あり。浮気をして帰宅すると、子供に触れる前に草木束(vanda41)を水に浸し、それで腕をこすれば良い。それでいいんかい!
Benyiro(B): 女性をやせ衰えさせる憑依霊(nyama42)がおる。子供を食べるそいつはニャグ(nyagu1)という。ニャグとズニ・ボム(dzuni bomu39)がおる。ニャグとズニ・ボムは別の霊だ。ニャグは黒い雌鶏と赤い雌鶏で扇がれる47。ズニは白い雄鶏じゃ。ズニは、4羽の鶏で扇がれる。黒と赤と、混色のと、カタグロトビ色(灰色と白の混じった)(wa chiphanga chiphanga)のじゃ。4羽の鶏じゃ。その後で(女性の)胸のここのところに付ける護符(pingu20)を縫ってもらう。子供(乳児)にはここ(足首)と手を(紐で)結んだ護符(pingu)を縫ってもらう。子供がおすわりするようになっても、座るのにはなんの問題もない。でもやがて、その子が立てるようになり、立っちができて、さらに歩こうとするなら、(紐を)切って、手の側と足首の側がばらばらになるようにな。だって、紐がつながったまま倒れたりしたら、子供は痙攣発作(chifofo59)に捕らえらてしまうんじゃ。
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B: そして、こんな風になる(手足を引きつらせる様をジェスチャーで示す)。なんとニャグの仕業、なんとズニの仕業。ニャグは本当にたちが悪い(文字通りには「ニャグこそは実に妖術使いだ」)。 ニャグとズニとキルイ(chilui40)じゃが、もし(それらをもっている女性が)ブッシュの夫(mulume weruni60)と寝ようとでもしたら、ブッシュの夫と寝たなら、子供(彼女の乳幼児)は即死んでしまう。そう、そうしようとしただけで、事を終えただけで、終えただけで、それまでじゃ。そうじゃなかったとしても、家で、子供が母親を見て、その乳を吸ったら、突然嘔吐が始まる。目は白目をむいて61!すぐさまにじゃよ。死んでしまう(意識を失う)。女性は問われる。「お前、いったい何をしたんだ?」もし近くに施術師がいれば、大急ぎで呼びにやられる。施術師がやって来ると、(子供の心臓がトゥ、トゥ、トゥってな。施術師が到着するや、女は問われる。「おい、お前さん、一体何をしたんだ?」「ああぁ、ご存知のことです。私は心に騙されました(ほんの気の迷いでした)」さて、施術師はブッシュに向かい、「薬(mihaso, pl.of muhaso10)」を集めに行く。(女は)着けていた護符(pingu20, plural.)をはずす。施術師はそれらに語りかける(唱えごとをする)。その病気を治療する施術師はそれらを水(実際にはただの水ではなく薬液(vuo24))に浸す。
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B: その憑依霊(nyama)を治療する者は、鶏を鍋の中の水(薬液)に浸け、その子供に振り撒く62。さあ、子供はヒィー。冷たいんじゃ。さあ、子供は息をふきかえす。それが済むと、さて女は言われる。「誰とそれをやったのか言いなさい。」「ああ、誰それさんとです。」 そうしたら、長老が(その相手の男のところに)送り出されて、(その相手の男は)言われる。「お前はあやうく他人の子供を殺すところだったぞ。お前さんは、誰それさんの妻を相手にいったい何をしたんだ?」「いえいえ、私が、とんでもない!」その男は言われる。「じゃあ、その女性をお前さんのところに来させよう。彼女が来て話してくれるだろう。そうしてやろうか?」「ああ、(彼女は)ずっと以前からの友だちです。さて、(子供の症状は)どんな風に始まったんでしょう。子供はもう治療されたんでしょうか。」「ではお黙りなさい。お前はヒツジと黒い鶏を差し出しなさい63。そして雌の仔牛一頭か、それでなければ、400シリングを64。」それで問題は終わりじゃ。その子供はもう治っていることじゃろう。
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B: これらの護符(pingu)を着けた女性は、(ブッシュの)夫とは寝ない。本当に(ブッシュの)夫とは寝ない。それに(ニャグをもっている)女性の夫の方も、もしお前がブッシュの妻(muchetu weruni65)と寝て、家に帰ってきたら、お前は子供(乳幼児)に触ってはならない。お前の施術師から草木束(vanda41)をもらっているんじゃない限りはな。それを水に浸して、手にしっかり擦りこみな。さあ、お前は子供を触るがいい。でもそうしないで子供に触ったら、その子がその場で硬直するのを66お前は見ることになるだろうよ。そしてお前は問われる。さて、ご主人、どうしてお前がその子を触ったら、その子は死んで(意識を失って)しまったんだい?その子供はもう少しで死ぬところだった。お前はいったい何をしたんだね。さてさて、御本人は自分が過ちを犯したことを知っている。草木束(vanda)に触れるまでは、その子に触れてはいけない。その後でなら触れなさい。